Artist's commentary
酒臭い車長
前線での私たちの楽しみについて言えば、出撃準備中に車内で決まって飲む酒だ!乗員の中で最年少の私は暇さえあれば、基地に娯楽品を売りに来る現地の人間からクーラーボックスいっぱいの酒とつまみを買い、周りの人間にばれないように出撃前にこっそりと戦車内に持ち込むのだ。あとはギリギリまで飲む!!これつきる。私がはじめてこの現状を目にしたときは、流石に驚きすぐにでも誰かと代わりたいと考えていたが、今ではすっかりこの酒臭い集団の一員となってしまった。慣れれば実に快適なものだ。装填手側の座席の背もたれを倒し、クーラーボックスを置き、車長はもちろん砲手・操縦手そして装填手の私が様々な機材がひしめく砲塔に集まり、まるでアジアの小さな屋台で晩酌をするかのように過ごすのだ。酒飲みが本当に戦えるのかって?ここがこの酒臭い集団のすごい所であり幸運な事なのだが、これが面白いほどまったくもって大丈夫なのだ。事実数日前の任務では出発30前までガッツリと飲んでいて、私自身流石にヤバイと思ったのだが、いざ出発してしまえば全員ケロッとし、数時間後には何事も無かったかのように基地に戻るのだ。だがしかし、こんな酒臭い集団で鍛えられた私でも一度だけヒヤッとしたことがあるそれは、年に一度行われる戦車の年次点検だ。この年次点検は普段私たち乗員の行う日常点検とは違い、戦車を後送して普段見れない箇所を含め様々な点検を行うのだ。この後送をする戦車の弾薬を乗員が全て取り除いて引き渡すのだが、その引渡しの際にそれはおこった、後送の準備のために来た整備員が、戦車をトランスポーターの荷台に載せる為に操縦席に座った時だ。カラン・・・操縦席の真隣にある予備弾薬庫から戦車内にあるはずのない、いやあってはならないものが整備員のところに転がってきたのだ。ちょうどその瞬間をなんの偶然か砲塔側に居た私もそれを目撃し、そして静寂の中私と整備員は見つめ合った。いったいどれだけの時間がったのかわからないが、やがて整備員は見つめるをやめ無言で作業を再開した。私は固まったまま作業が終わるのを待つしかなかった。その結果だが、何もなかった・・・あの整備員の真意はわからないが、結局誰にも言わなかったらしい。おかげで酒臭い集団は何事も無くまた今日も戦車の中で酒を飲むのだった・・・といきたいがそうはならない、そもそも今回の原因となったのは予備弾薬庫の空き缶だ。いったい誰があそこに入れたのか・・・私は犯人を特定するためその時の空き缶を調べる事にした。そして犯人はすぐに分かった。酒臭い集団の紅一点、車長だった。空き缶の縁にくっきりと乾燥を避ける為のグロスがついていたのだ。こんなものをつけるのは車長しかいない、私はこの空き缶についてそれとなく車長に聞いてみた。車長「あ~それ?、ごめんごめんゴミ片付けるときに床下の空き缶見落としててさ~後で気づいたんだけどめんどくさいから、空いてる弾薬庫に入れちゃったwほら車体側の予備弾薬庫の一番下って地雷対策で何本か抜いてたじゃん?あれさぁ~ゴミ箱に調度いいんだよねぇ~w」私「ソウデスネHAHAHAHA」私の中の素敵でエロカッコイイおねぇさん的存在でオ○ズでもあった車長が、別の何かに変わった瞬間でした。■以上妄想戦車兵手記でした。