Artist's commentary
ニーア:オートマタ the [ ]
NieR:Automata
―随行支援ユニット通信ロビーにて―
ポッド042より警告:「K」、もしくは「アジ」ときいて機密情報の可能性に関して危機感をおぼえたものは、離脱を要求する。アジを数回食してから出直してきてほしい。
ポッド153より推奨:以上を気にしない者、すでに苦難を知ったものに、当該ロビーへの通過を由とする。
NieR:Automata 与太話 the [K]to..
与太話 ー 「Aji wo [K]utta」
人類史には、「食わず嫌い」という言葉がある。
人間は、「美しいもの」を好んだ。
その一環として、自らの生存率ー、他種との競争力を維持しより高める目的を起源に、
己に害の無いもの。かつ栄養のある。「美味しい」ものを摂取したと言われる。
アンドロイドに食事なんて必要ない。
それは、「食わず嫌い」だったと、思い知らされた。
味覚さえ、味覚さえ、味覚さえ 無かったなら。
ー知らなかった。。
アジって、こんなに…おいしかったんだ―
------―
少年は荒野を駆ける。
何かひどい現実から逃げるように、
あるいは見えない何かを追いかけるように―。
熱砂を巻き上げさまよう機械に目もくれず、
ただただ獣のごとく走る。
(…かまうものか)
体の節々は限界を告げる。関節には砂が入り駆動に支障を来たす
(かまうものか)
加熱限度を超えた脚部がときおり火花を散らしても
(かまうものか!)
荒れる息は今にも内臓プラントを吐きだしてしまいかねないほどの勢いで
「知ったことじゃない!」 叫ぶ。
彼は狂って―は、いなかった。
その胸に宿る情念は激しくまたそれゆえに純粋な決意が、渦巻いていた―。
世界中のアジを、釣り尽くしてやる!!
「ああああああああああああああああああああ!」
走った末に港湾地区へ突入する折り、通りすがりの機械生命体が、
流れ作業のように胴体を両断され一瞬で沈黙した。
そこまでされる謂れはない。
まるでその怒りを表現したアートのように、彼はそこで永遠のオブジェになった。「ニイチャーン!」
ーーーー
少年は海原を駆ける。
船は波を割って進み、海風が頬をなぜた。
港に着いたときそこには、オペレーター、21Oが。
「待っていましたよ、9S。漁船の用意はできています。」
船艇には最新技術を投じてつくられたありとあらゆる「対魚類駆逐装備」がふんだんに設置されていた。
サオ、ポッド連携型リール、迷彩ワイヤー、船上クッキングセット「あ、それは私のですからね」21O。
(もの好きなひとだー。)
そうひとりごちながら装備を確認し、これからはじまる壮大な旅に思いをはせる少年。
そうしていると、甲板の隅に、
部隊備品に似つかわしくない錆びた箱を見つけた。確認のために、開くと―。
パスカルの村からの贈り物ー、樹脂加工品の疑似餌らしきものや、網仕掛けの一式が目に入ってきた。
部隊開発部で機械的なものは揃うが、記録にある原始的釣り装備の不足にいだいていた不安を払拭するものだった。
「・・・。」感嘆の息が漏れる。
箱の隅には、「満足なサバより、不満足なサメであれ!」そう刻まれていた。パスカルだ。
箱を閉じた手が力み、こうべを垂れ、肩が震える。
もう、機械生命体も、アンドロイドもない。
9Sの興味は、ただただ魚、それもアジだけに向けられていた。
21Oは背後からそっと近寄り、背中に手を当てようと思ったが、そうはせず。
傍らに立ち横目で少年を見つめる。
彼の横顔はもはやー、立派な漁師の面構えだった。
さぁ、釣ろう。
ー いっぽう。レジスタンスキャンプ ―
『A2に提案。魚の調理はキャンプの者にまかせたほうがいいのではないか』
「だまれ!集中してるんだから… あっ!」
『推測、武装が食材をテーブルごと切断』
「ぅぁ、あぁ―…。。。」
『疑問:A2の状況適応能力-、特に「女子力」に欠如が見られる』
「うる!さい!道具が悪いんだよこれは」
【ポッド153から042へ、ポッド042の疑問に意見する】
『了解、なにか』
【A2はもっとも使い慣れた装備を選択したが、当該武装を使用した時点で答えは明らかである。加えてこちらに同行する21Oと比較し参照することで裏付けが可能である。A2の「女子力」は欠落ではなく… 、 皆無】
「壊すぞおまえら!!」
ーーーーー
がば。と―
暗い自室で彼女は起き上がった。
起動とともに胸を衝く動悸。胸に手をあて、その膨らみに指先を少し沈み込ませて、
己の、現実の駆動音を感じ取った。
どうやらバンカーで、一休みしていたらしい。
データメンテナンスでもしていたのだろうか、直前の記憶はおぼつかず、ポッドの姿が見当たらなかった。
「・・・いまのは、夢(ユメ)…?」
「目が覚めたか?2B。さっそくだが任務がある」司令官
「え。。。ぁ、了解。…え?」
自室入り口には、司令官が立っていた。
彼女は仁王立ちして入口に人影をつくり、通路から差す光が余計に影を深くしている。。
その口調は穏やかなものだったが、
2Bは気付いた。その貌は鬼のような形相で、その脇に抱えられたコンテナには―
「産地直送。鮮度抜群」と書かれていた―。
Aji wo [T]sutta ―
→次回『ヨルハ部隊事業仕分けー漁師掃討編〈グランダー2B〉」』―
(暗幕)
てんててんてん てんてててん
てんててんてん てんてててん(曲が流れ始め、)
てててーててーててー(エンディングクレジット、)
てててーててーててー(海中の魚を映した映像をバックにスタッフロール)
ててて~…(魚たちの背景を、釣り針、サビキ・モジュールや網、モリなどが通過していく。。。)
ー
(最後に一匹釣られる)「ニイチャーン!!」
おまけ
ポッド042『A2に推奨、この「テマキズシ」なら、無残に切り刻まれた魚介を使用した料理が、完成する見込みを推測。データの参照を求む』
A2「…わかった、それならできそうだ。見てろよ…」
ポッド153【「ちくしょう・だいなしにしやがった・あなたはいつもそうだ。」】
ポッド042『「貴官はいつも直感的思考で先行する傾向がある。そして結果的に後手になっていると推測される」』
ポッド153【「A2に、テーブルの下でうずくまっておくことを要請する」】
A2「うる さい! くそ…、散歩行きたくなってきた。。。」