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Artist's commentary
永遠をさ迷う氷床:クオウ
豪雨と月光の常なる夜に潜む、黒衣の男。
かつて仕えた姫は、いや、妻だったか・・それさえも忘れてしまった。
大切な姫を、永遠の中に探す。クオウはそこで諦めていればよかった。
この永遠の時間の空間の中で、壊れた結晶の「君」も、まだ青年だった「君」も、少女だった「君」も・・・どれもクオウの「君」ではなかった。
_時空を移動するこのあわれな黒い影の自分・・固定された時空のなかのあの自分、
幸せな自分を殺めてしまおうかと思った。フクロ、白き少女。
でもその自分、いや彼・・彼女を見る「君」の顔は優しかった。獣のような目をしていても
その奥の結晶は見間違うはずは無い。決して奪うことなど出来ない。君も、俺の、「君」じゃない。_
クオウは幾重もの永遠をさまよっていた。
「最後に見つけた君はすでに壊れていたけれど・・抱きしめて、弔った。
俺の旅はもう終わりにしよう。亡くしたものを取り戻すなどと・・・。
この豪雨に消えよう・・・誰か、俺を殺して」
クオウは雨に溶け行く。もう一度壊れた「君」の影に出会う
姫はまだ、姫の形を保っている!壊れた姫よ!その瞳の色は・・。
未来に出会った姫は過去にもたらされた確かな印を彼に示した。
結晶の青、凍った月の金色。
抉り出した眼球の色。
彼女こそ、クオウの姫、壊れた姫。
もうそれ以上の幸せはなかった。クオウは彼女を浚って狂ったように抱きしめて
それが何の反応を示さずとも、ずっと、骨がひしゃげるくらいに握り締めた。
姫の肉が陥没するまで、姫は彼のものだった。
そこに理性はもう既に無かった。
苦しみ、そしてこの上ない幸福。
愛、無。
クオウの時間はやっと止まる事ができた。