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ran straherz (original) drawn by rakurakutei_ramen

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  • 菓厘堂4コマ番外編小説もどき【Ghostrick_live】16

    すっかり日も登った時刻、相変わらず陽気を通り越して暑苦しい日差しに照らされる室内に、控えめなノックの音が転がった。

     次いで小さく開かれたドアの隙間から覗く大きな目、中に自身を脅かす脅威が無い事を確認できたのか、見上げるほどの大きな体を縮こませたキュイが、音も無く部屋の中に滑り込んだ。

     毎朝、予想の斜め上をいく寝相で、あられもない姿を晒してキュイを出迎えていた「小お嬢様」ことランだったが、今日はお行儀よく(?)ベッドに横になっているようで、ほっと安堵の息を吐く。

    「おはようございます、お嬢様方。お目覚めのお時間でございますよ~…?あれ?」

     優しく肩をゆすろうとしたキュイの動きが止まった。シュトラヘルツのメイドの中で1、2を争う長身のキュイでも少し足を曲げれば収まれる程の大きなベッドには、数日前に「二人になったラン」が、一人しか眠っていなかったのだ。

     もしかして片方は、また眠っている間に幽体化して、ベッドの下にでも沈んでいるのだろうか?思えば昨日は、一人は照明の上に、一人はベッドと床の隙間に器用に埋もれていて、起こすのに苦労した。今回は一人だけで済んでいるようだが、少なくとも目に見えない場所にすり抜けて眠りこけているとなると…タンスの中やクローゼットの中、最悪、隣や上下階の部屋も探さなくてはなるまい。

     手間が倍…と考えかけて自分を叱咤するキュイの前で、寝ていたランがむくりと起き上がった。と思いきや、寝たままのパンダのパジャマを着たランを残して、全裸のランが起き上がったのである。

     咄嗟に理解が及ばず目を白黒させるキュイに向かって、二人のランが気の抜けた声でこう言った。

    「「幽体離脱~」」

    「ブボッフォ!!wwwwww」

     おそらく今まで一度もした事が無いであろうはしたない吹き出し方をして、崩れ落ちるキュイ。

     数年前に日本で、ブームという程ではなかったにしろ、そこそこ世間に知られた所謂「双子芸」であったが、そうとは知らないキュイの腹筋を部位破壊する程度に効果は抜群のようだ。

     ふかふかの絨毯の上に丸まってヒクヒクと痙攣するキュイに、二人のランは上機嫌な様子で手を打ち合わせ、お互いを称え合った。

     言うまでもないかもしれないが、パンダのパジャマがお馴染みのラン、そして全裸の方がエルザによって「レン」と名付けられた、もう一人のランである。命名理由は「ランを元にリファインされたランと同じ存在=Re・RAN(ここでの元ネタが「Re-GZ」なのは怒られるので秘密)=REN(RANのRAをReに置き換えた)=レン」というシンプルなものであったが、本人は大層お気に召したようで、自分を正しく指し示す意味を持つ名であると同時に、ランと語感が似ていて呼ばれても違和感が無いのが決め手らしい。

     ランと同一の存在になっただけでなく、ランの記憶までをもそっくりそのまま持っているお陰で、知っている筈のない一発芸にどちらともなく阿吽の呼吸で合わせてくるものだから、おちゃっぴぃというか悪巫山戯というか、隙あらば笑わせに掛かる悪戯に興じる結果となっている。

     …生まれて初めて自分の意志を持って他人と接する機会を得たレンの悪戯に、その事を一番理解しているランが付き合っていると取れなくもないが…いずれにせよ、メイド達はそんな二人の前にキリキリ舞いなのだった。

    【小お嬢様は幽霊から小悪魔に超進化】

     メイド達の間での”なんちゃって双子”の評価は、概ねこんな感じである。

     悪戯特化のキョーダインとかいう声もあったが、日本の特撮を知らない他のメイドに通じなかったので黙殺されたご様子。

     これだけなら、この二人は怨霊と化したエトランゼという少女の霊を元にコピーされた存在という以外、単にランが分裂した(分裂するだけならプラナリアにもスライムにもできる芸当であるから、左程問題にはされなかった)だけで、今迄と変わりは無いように思うかもしれない。

     ところが、これだけには収まらない、とんでもない変化が二人に起きていたのだった。

     あの事件の翌日。

     諸々の後始末の為、再びシュトラヘルツ邸へ訪れていたVKとエルザの間で、こんな会話が交わされていた。

    「実は…今回の件の模倣等、今後起こり得る様々な要因を排除する為に、妹さん方を生み出した”コピーゴーストの研究”があった事を公にするのは拙い、との見解により、情報漏洩を防ぐ為にスイーパーズではなく、こちらの医療班に委任して彼女達の健康診断を行って頂いた、というのはご承知の通りなのですが。結果がですね、その、何と言って良いものやら…まぁ、彼女達の事情を鑑みれば、今回の判断は正解だったかな、と…」

    「なんじゃ歯切れの悪い。生娘でないというのなら別に驚かんぞ。そも、オリジナルからして凌辱されて亡くなっておるのだ、そのコピーであるあの子達が生まれつき生娘でなくとも、おかしな話では…」

    「そうではないのです!」

     言葉を選ぼうにも選ぶ言葉が無いといった様子で声を荒げるVKに、エルザが眉を顰める。

    「本当に、これをどう説明して良いものか皆目見当が付きません。なので結論だけ申し上げます。二人の妹さんに、生命活動が認められました」

    「………………………、は?」

     たっぷり溜めを作って、エルザの顎がカクンと落ちた。

    「ですから、あのお二人に生命活動が認められたのです!信じられません、もう、あなたの存在や性格くらい滅茶苦茶なのですよ!彼女達は間違いなく『生きている』のです!」

    「ええぇ…つまり生霊という事か?しかし…オリジナルは既に亡くなっていて…?肉体は失われておるのじゃから…?そもそも憑依とは根本的に違う訳じゃし、仮に肉体があったとしても、オリジナルの肉体とコピーの間で魂の緒が結び付くのか…?ん?んん??」

    「違います!臨死体験等のような、肉体から抜け出た霊魂とは訳が違うのです!彼女達は霊でありながら魂が形を成した霊ではなく、単一の存在となり生きて魂を持っている、まさしく一字一句違う事無く、文字通りの『生き霊』に変異し、『ゴーストとして生きている』のです!もう!私には!訳が分かりません!」

    「あー…ああ。なんとなく理解した。つまりあの子達が子供を産んだ場合、鬼○郎になる訳だ。リアル幽霊族か、スゲーな」

    「だからどうしてあなたはそんなに平然としていられるんですくゎあぁ―――!!!生命のっつーか生者と死者のっつーか!霊魂の在り様をかくあるものとして培ってきた学説を!!根本から覆す事態だっつってんですよッ!!!」

     紳士然とした物腰は何処へやら、うがー、とか、ぐわー、とか喚き散らして頭を掻きむしるVKとは対照的に、艶のある笑みを浮かべたエルザは、たった一言でこの問題を終結させた。

    「そんなもん決まっておろう。どんな存在だろうとも、あの二人が儂の大切な家族である事に変わりはないからじゃ」

     返す刀でバッサリやられたVKは現在、支配人を務めるホテル兼スイーパーズ支部の支配人室で、真っ白に燃え尽きている。「あー」だの「ぱー」だの言うだけの生ける屍と化した彼は、暫く使い物にならないだろう。

     無論、ラン・レン姉妹に起きた異常事態を事も無げに受け入れたエルザに、取り乱していた反動で脱力したというのもあるが、それ以上に、密かにエルザに想いを寄せている彼を打ちのめす事件があったのである。

     笑い過ぎて横腹が攣ったキュイをひとまず自分達が寝ていたベッドに寝かせ、遅い朝食の為に食堂へ向かっていた二人は、とある部屋の前である匂いに気付いた。

     漂うのは汗と精が入り交じった匂い。そしてこの部屋は、エルザの自室であり…要はその手の匂いという事だ。

     露骨に嫌そうな顔で鼻をつまむランと、興味深げに中を覗き込もうとして首根っこを掴まれるレン。同じという割に意外と対照的な二人。

    「まだやっているの?もう三日目だよ…よく飽きないなぁ」

    「というより、よく持続するな、って言った方が正確ね。でも、久し振りに会って求められたんだもの、愛しあう男女としては当然じゃない?」

    「その男女の括りにまともに収まらない組み合わせなんだけど!?…まぁ、頭では理解できるけれど…慣れないものは慣れないわ」

    「ランだって、玉竜に求められたら応えるでしょう?それとも断っちゃうの?好きなのに?」

     レンの問いに赤面して視線を逸らした時点で答えているようなものだが、それでもランの不機嫌はなかなか消えない。

    「応援してあげるのが妹の務めだと思うけれど。お姉ちゃんの幸せの為よ?」

    「…でも、お姉ちゃんの旦那さんだからって、お義兄ちゃんと呼ぶには、ちょっと…どちらかといえばお爺ちゃんだよ、あの人」

     そう、ランの言葉から伺える通り、エルザの夫が数十年振りにシュトラヘルツ邸に帰ってきているのである。

     VKがラン・レン姉妹の身に起きた異常事態の報告を終えて、一旦ホテルに戻ろうとしていた時の事。ホールで「祝☆小お嬢様救出成功パーティー」を開き、ドンチャン騒ぎをしていたメイド達がやけに静かであり、更に殺気までもが感じ取れる事態に、もしや組織の生き残りが報復に現れたのか、と急いで現場に向かったVKが見たものは、護衛メイドに取り囲まれる一人の老人であった。

     ファンタジーの世界から抜け出てきたような風体の、その老人から敵意も悪意も感じられず困惑しているVKの前で、年配のメイド数人が銃を構えるコルと今にもナイフを投擲しそうなピンクちゃんを慌てて止め、老人に対して恭しく頭を下げのだ。

    「折角のお帰りに、大変失礼致しました!お帰りなさいませ、旦那様!!」

     瞬間、シュトラヘルツ邸が無音の衝撃に揺れた気がした。

    「…旦那!?か、帰ってきたのか!」

     流石の魔法使いが騒ぎに気付かない筈も無く、駆け付けたエルザの台詞に衝撃を受けるVK。直立不動となった彼の横を駆け抜けたエルザは、一度も彼の前で見せた事の無い、蕩けた表情で老人に飛び付いた。

    「おかえり旦那ぁ~♪旦那ぁ~♪」

    「ただいま、エルザ。ああ、えー…という訳で、儂がエルザの夫だ。信じてもらえたかな?」

     慌てふためくメイド達、その中心で、ごろにゃぁん♪と喉でも鳴らさんばかりに甘えるエルザ。VKは確かに聞いた、心の中で何かが軋む音を。

     直後、彼に非情な追い打ちが掛けられる事となった。ミフィとアイーナがエルザの夫に詰め寄ったからである。

     初めはエルザが自分から言い出すのを待つつもりで、それとなく水を差し向けるも、もじもじしてなかなか言い出さないエルザに業を煮やし、二人掛かりで尻を抓り上げ、無理矢理言わせたのだ。

     子供が欲しい、と。

     そしてミフィとアイーナも、エルザとの間に子を設けたい、と宣言した。

     すわ修羅場突入か、と身構えるメイド達の予想とは裏腹に、対する夫の反応は意外なもので、

    「ではまず、儂とエルザの子を先に作らねばな。正式な夫の特権としてそれだけは譲れん。…しかしそうか、とうとう子をなぁ。セレンの時も驚いたが、いよいよ儂とエルザの子をか。ああ、よく決意してくれた!」

     …と、大喜びであった。そりゃあ、妻が自分の子を産んでくれるともなれば嬉しいものだが、なんとミフィとアイーナに対してまでも喜んでいたのだから、不可解極まりない。

     曰く、エルザをそこまで愛してくれているのなら構わない、との事らしい。一時は魔法使い相手に全面戦争も辞さない覚悟を決めていた普通の人間二人はすっかり毒気を抜かれ、逆に「それで良いのか?」と聞く始末。そして夫は「エルザは愛する事ができる人だが、もっと自分が愛される喜びを知ってほしいのだよ、何せ男性としても愛する事ができる人なのだから。エルザが女性を愛するというのなら、儂はいくらでも許すと決めている。ただ、もう一つ決めている事は…エルザに愛される男は儂一人だけで良い、という事だ」と、のたまいやがった。

     つまりは、ブッ壊れた恋愛観を持つエルザの夫なだけに、夫の方も色々ブッ壊れていたのである。大体、二人がエルザから聞き出した話によれば、元を辿れば夫がエルザの恋愛観をブッ壊した張本人だった訳で。そんな夫がまともな人物でない事くらい、順序立てて考えれば容易に想像できようというものだ。

     呆けた顔でお互い顔を見合わせたミフィとアイーナは、このどうしようもないバカップルをピコハンマー乱舞の刑に処した。今から子供の顔を見るのが楽しみなのか、壮年にしては精悍な顔つきをニヤけさせてピコピコ叩かれる夫が癪に障った二人の私刑は、実に30分にも及んだ。

    「…ミスター?ちょ、どうしたのミスター!?」

     そんな「捻じ曲がったリア充共の痴話喧嘩」的な騒ぎの後ろで、心がポッキリと折れてその場に倒れ伏し絨毯に涙の染みを作っている、砂の器よろしくさらさらと消えて無くなりそうなVKが発見されたのは、もう勝手にやっとれとばかりにメイド達が三々五々解散し始めた頃であった。

     …それからというものエルザと夫は部屋に篭りきり、食事も寝る間も惜しんで励み続け、今なお真っ最中という訳である。部屋の中がどんな惨状になっているかは、ピンクちゃんが近付いただけで発情モードに突入してしまう事から、大体お察し頂けるであろう。

     ドアを隔ててくぐもった、一際甲高くなったエルザの嬌声を耳に、複雑な思いを背に滲ませたランが、食堂に向かってレンを引き摺っていく。

    「今、玉竜とあんな事したら私ってばどうなっちゃうのかな~、って思ったでしょ?私も思った」

     両手を頬に当てていやんいやんするレンに、多分、紫月を除けば最大の敵は自分になる、そう直感したランは、掴む場所を襟から耳に変えて引っ張る事で牽制を開始した。

    「あ、待って耳引っ張らないで、耳痛い、痛い耳耳みみみみみみみみみみみみ」

     少なくとも、自分と同じ顔をしたレンが義姉みたいな性格になるのだけは嫌だなぁ。

     でもちょっぴり、レンが自分と違う性格になるのは、エトランゼ・コピーではなくレンという個人になっていくみたいで、それは喜ばしい事なんだろうな、なんて思う。

     同時刻。

    「…解せぬ」

     鏡の前で服装やら髪形やらを数人に弄られながら、仏頂面のロリントが呟いた。

     対戦車歩兵ギガノフを討ち取った証としてコルに接収されたギガントは、分身体は本体の近くに居ないと行動が制限されるという欠点を緩和する意味で返却され、何やら意味深な笑みをしたピンクちゃんに買い与えられた小さなハート形のポーチに収まっている。しかし、撃つ事はできない。携行は許されても、発砲にはコルの承認を得なければならないという制約を設けられ、仮に撃とうにも今の幼い姿ではまともに扱えないのだ。今のロリントは何の力も持たない、完全無欠の幼女だった。

     これまでの人生の中でとんと縁の無かったピンクのフリフリした服を着せられ(当然下着もだ)、身だしなみを整えられたと思ったらひょいと抱え上げられ、革張りの豪華な椅子に据えられる。そんなロリントの顔を、テカテカツヤツヤな、これまた高級品の机が半分ほど覆い隠す。

     あれこれとロリントの世話を焼いているのは、屈強な体を女ものの服に押し込めたオカマ達だ。なお、ロリントという名は仮名のつもりが正式な名になってしまったようで、どう着飾っても女装をしているゴリラかブルドッグのような顔をしたオカマ(おそらく類似した種のモンスター)達に、可愛いものを愛でるうっとりとした目で呼び掛けられる度、背筋を怖気が駆け上がる。

    「わ、わたしは何故、こんな所に居るのだ」

    「あらぁん、それは愚問ねぇ。それは、あなたが新たな人生をスタートさせる一環として、この宝石商のオーナー代理を任せたからでしょぉ?」

    「というか貴様、何故生きているのだ!!」

     我慢の限界に達し、ロリントが舌足らずな可愛らしい声で怒鳴りつけたのは、確かにギガノフとしてホテル襲撃時に討ち取った筈の、元傭兵グリズリーことベアであった。

    「迫撃砲の直撃でも大怪我くらいで済んでたのよ、対戦車ライフルよりちょっと強い程度の攻撃で仕留められる訳が無いでしょ?本気であたしを殺したいなら、ロケットランチャーでも持って来るのねぇ♪死ねる気がしないけれど」

    「…化け物か、貴様は」

    「お・互・い・さ・ま・でしょ。うふ♪」

     からくりはただただ単純明快だ。ギガノフに敗北を喫したベアは、彼が戦いを欲する理由と次の標的がコルである事に気付いていた。そこで、この負の連鎖を終わらせる為に一計を案じ、VKに自分の死を偽装してもらい、コル(あるいはいつか標的になるであろうかつての部下達)を奮起させようとしたのである。負傷自体は本当の事であり、その傷跡は生々しく残っているのだが、胸骨粉砕骨折、並びに肺胞一箇所、内臓数ヶ所が圧迫破裂という重傷だったにも関わらず、僅か数日足らずでこうして動き回れるまでに快復している様は、ロリントでなくとも化け物と言いたくなるというものだ。

     真相を知ったコルに額にマグナム弾計28発を撃ち込まれ、平然とオカマ全開で笑っていたら今度はギガントをこめかみに押し当てられ、流石にシャレにならないと日系人の元部下に教わった日本における謝罪の究極奥義、ドゲザで謝った事は、ここだけの話である。問答無用で後頭部に踵が落ちてきたけれど。

    「本当に、わたしは何故こんな所に居るのだ。バレット・スコールの監視下に置かれる筈ではなかったのか?」

    「あーのーねー、普通は日常生活で二つ名呼ぶなんて事はしないの、コルちゃんて呼んであげなさい。それと、あんたがここに居るのは、シュトラヘルツのメイドちゃん達にペロられて泣いていたあんたを見かねて、あたしがここに連れて来てあげたんだって、何回も言っているじゃないの。感謝してほしいくらいだわ」

    「ち、違っ、あれは泣いていた訳では…!わたしの意志とは無関係に、そう、この体が勝手に涙を流しただけであってだな!大体、ここに連れて来られたのも私の意志ではなかった、毎日毎日気味の悪いオカマに囲まれ玩具扱いされて、どこに感謝などしりょぽぴぷっ」

     見てくれはともかく、中身はギガノフのままなロリントには著しく不本意な出来事だったらしく、己の名誉を懸けた反論を試み…ぷにぷにしたマシュマロほっぺの両側を片手で掴まれて、吊り上げられてしまった。

    「それが今のテメェ自身の反応だってのがまだ解んねェのか、あァ?そんな状態であの家でまともな社会勉強ができたっつーんかオゥコラ。俺達ゃ確かにオカマだがなァ、オカマなりに心配してテメェの捻じ曲がった感性を矯正しようとしてやってんだろうが。コルにも言われてたろうがよ、テメェの外見に内面合わせろってよ」

     そうやって凄むベアは、まさしく名を体現する、獰猛さを剥き出しにした熊である。仮にも戦場を渡り歩いてきたロリントは恐怖を感じる事はなかったが、気迫に圧されて何も言えず…正確には、両頬を圧迫されてタコみたいになった口では何を言っても「プー」になってしまう為、大人しくなすがままにされていた。

    「いいか、よく聞け?初めに変身した姿だの作り出した分身だのってのァな、テメェの性別がどっち寄りなのかの判断材料にもなるんだよ。こうして女の姿である以上テメェは女なんだ、いい加減現実見て女の自分を受け入れやがれ。それが嫌だってんなら…」

     ベアの眼が怪しく光るのを見て、知らずロリントの体がビクリと震える。

    「あたしの飛び切りアッツ~いキスをお見舞いしちゃうわよっ♪」

     むちゅーっと突き出された、ヒルのお化けみたいに蠢くベアの唇に吸い付かれるのを想像し、自覚できる程血の気が引いたロリントはそのまま気を失い、そして…しめやかに失禁した。

    「オーナー、それあたし達でも拷問~。可哀想に、気絶しちゃったじゃな~い」

     ねー、と頷き合う従業員達。見目麗しい美女であれば、男心をくすぐるあざとさ全開の仕草なのだが、悲しい事に見目むさ苦しいオカマである。

    「失礼ねあんた達!いいから拭くものと着替え持ってらっしゃい!」

     ニヤニヤしながら、いえっさー、と砕けた敬礼を返して事務室を出て行く従業員達を見送ったベアは、壁の姿見に自分を映し、

    「…そんなに気色悪がる程か…?」

     おしゃまに投げキッス。そしてあまりの不気味さに自分でショックを受けるその後ろで、白目を剥いたロリントの顔色が増々蒼白になっていく。

     過去の自分勝手な行いによる業とはいえ、ロリントが新たな自分に生まれ変わるまでの道のりは、前途多難なようである。

     場面を戻しシュトラヘルツ邸。

    「そういえば、あの人はどうなったのかな?」

     レンの一言に、しっとりもっちりした極上のフレンチトーストを味わっていたランが首を傾げた。

    「あの人?」

    「白衣のメガネもやし」

    「………ああ、リュートさんね。逮捕はされなかった…ってくらいしか知らないなぁ。コルさん、知ってる?」

     三拍置いて該当する人物を思い出し、酷い言い草もあったものだが間違ってはないな、と思いつつコルに問い掛けると、頷きを以て返される。

    「はい、存じております。ランお嬢様の仰る通り、リュート様が此度の件に関与なさっていた事情をお嬢様が立証された事により、情状酌量が認められ逮捕にまでは至っておりません。ですが、無実では済ませられなかったようでございます」

    「まぁ…悪事を追う為に悪事に加担するような真似をしていたんだもの、立場が難しくなるのも無理ない、か」

     事件の真っただ中にあった身としては、何とも複雑な心境ではあったが…彼の処遇について、一体どちらが良かったのかなど判別の付かないランは、コルの話を聞きながら気怠そうに息を吐く。一応、彼に対して自分なりの「けじめ」は付けたのだから、尚更だ。

     当然の事として、当初スイーパーズから、事件の発端となった研究の先導者であったリュートに糾弾の矛先が向けられていた。かの発明卿の孫という肩書も災いし、孫もまた血の争えない異端者であり、同じ過ちを繰り返す忌み深き一族として、終身刑、あるいは記憶抹消の後スイーパーズからカーマイン家を永久追放せよ、と断罪を叫ぶ声が高まっていたのである。

     そこに待ったを掛けたのがエルザだった。発明卿、並びにリュートが己の探求心の為だけに犯罪組織と通じていたのだと信じて疑わない者達を前に、推論交じりにではあるが発明卿の死に隠された真意、リュートがその遺志を受け継いで同じ手段を執った事、それが己を生贄に捧げた決死の囮捜査であった事を説き、擁護したのだ。祖父の代で失敗した目論見は孫の手で、紆余曲折あれど見事果たされたのだ、と。

     初めこそ懐疑的に、エルザがリュートの口車に乗せられているだけと取り合おうともしなかった者達も、エルザの語る真相を当時の捜査記録と状況証拠が証明してしまう事に愕然とし、次第に耳を傾けるようになっていった。そしてエルザは、これまでリュートが行ってきた援助と霊害対策に貢献してきた実績、おそらくリュートはおろか発明卿すらも想定していなかったであろう組織の壊滅にまで至らしめた事実を並べ立て、他ならぬ事件の当事者という立場を利用した自分達の証言を盾に、魔法使いが得意とする舌先三寸を絡め、口八丁まで駆使してリュートを弁護してみせたのだ。

     最終的に発明卿とリュートの行いを、犯罪組織壊滅の糸口を掴んだ功績として、遂に認めさせる事に成功していたりする。

    「じゃあリュートさん、お爺さんの名誉を取り戻せたんだ」

    「ええ、お嬢様の熱弁に加え、事件に直接関与した私共と、黒幕の正体を知ってしまい脅迫されて参加していた数人の研究スタッフの証言、何より渦中にあられた小お嬢様方がリュート様を連中の仲間として見ておられない事が、決め手となったようですね」

     ただ、そうして功績を認められはしたものの、捜査権を持たないリュートが独自の囮捜査を展開して犯罪組織と通じていた件は越権行為とみなされ、組織のツテで街の雑霊を集めていたのも自身の研究に関係があった事も本人が認めており、これは人間社会で言う誘拐や人身売買に相当するらしく、罪に問われるのだけは避けようがなかった。

     本来なら逮捕されるところを、罰金と一年の保護観察処分(事実上の軟禁刑)、五年の研究活動禁止処分、その間のスイーパーズからの依頼(アドバイザーや物資貸与・提供)に対する無償奉仕と、功績を差し引いて減刑されてはいるとはいえ、この程度で済ませられたのはエルザの弁護あっての事だ。

    「成程ね…でも、お姉ちゃんはどうしてリュートさんを庇う気になったんだろう。個人的に親しい間柄でもなければ、私を誘拐した犯人だと疑ってすらいたんでしょう?そこまで肩入れする理由が解らないわ」

     ランの疑問に、ふわっふわのオムレツの中に仕込まれたグリンピースを的確にほじり出していたレンは、”コピーの自分”の記憶を探って難しい顔をした。いくら思い出そうにもエルザとリュートの接点は、大雑把に考えても発明卿が亡くなった際の事件に関わっていたという話くらいしか思い当たらない。それが縁になっていたとも思えず、考え込むフリをしてこっそりランのオムレツの皿にグリンピースを放り込む。

    「それはお嬢様が、リュート様に覚悟を見出されたからでございましょう。何かを成す為に覚悟を決めた者が居れば、それが悪事でない限り、お嬢様は協力を惜しむ事はありません。例えそれが行きずりであろうとも、お嬢様のお心を打つ程の覚悟を示せたならば、お嬢様は分け隔てなく助け支え、その背をそっと押されるのです。何故なら、自分の為だけの力など力であって力ではない、そして自分には、それができる力があるのだから…と、よく仰っておられましたもの」

     そう言っていたエルザの姿を思い浮かべ、誇らしげに二人を見やるコルだったが、直後に表情が消えた。

     折角、事件を経て少しは信用が上向きになってきたエルザの「ちょっと良い話」を語って聞かせていたというのに、当の本人達は互いの皿にグリンピースを押し付ける陣地争いに夢中で、完全に話そっちのけだったのである。

    「…食べ物で遊ぶようなマナーの悪い小お嬢様方のランチメニューは、グリンピース尽くしにでも致しましょうか。それから、ディナーはグリンピースのフルコースを心ゆくまでご堪能して頂きましょう」

     まさかの死刑宣告に、素知らぬ顔でカウンターを返したランと1.3倍になって帰ってきたグリンピースを恨めしそうに睨んでいたレンが、同時に悲鳴を上げた。

    「お嫌でしたら好き嫌いなさらずにお食べなさいまし、小お嬢様方の健康を想って料理を作ったシェフが泣いてしまいます。残さずお食べ下されば、このコルとて意地悪な事は申しませんわ。今宵は当家での最後の晩餐になるのですから、嫌いなものではなく、お好きなものをお口になさりたいでしょう?」

    「「は~い…」」

     なら仕方ない、とグリンピースを元の分量に分け合って、オムレツと一緒に口に運び…ランだけが、ギギギ、と音がしそうなぎこちない動きでコルを振り返る。

     何事かを言いたげな顔でコルの目を見据えたまま、口の中にグリンピースが潜り込んでいる事も忘れ、十分に咀嚼してからたっぷり溜めを作って嚥下。震える手でグラスを持ち、ミルクを一気に飲み干した後にひと息吐いて、

    「最後って何が!?」

     と、突如焦り出す。意外に余裕な動作を見せてはいたが、ミルクで口に白いおヒゲを作っている辺り、気が動転しているのかもしれない。

    「何を仰います、明日は二ホンにお戻りになられる日ではありませんか」

    「ヴェ」

     変な声が出た。

     実は全ての用事も片付いた今、新学期が間近に迫っており、新たな姉妹のレンを連れ日本に帰る日を明日に控えていたのである。緊張の連続を強いられていた事件から解放された安堵感も手伝って、事件後から今日までの日々を賑やかなメイド達に囲まれて過ごし、すっかり気が抜けてだらけた生活を送っていたランは、見事にど忘れしていたのである。

    「そ、そうだったっけ!?うわあ、日にちの感覚がまるで無くなってるよ、私!どうしよう、荷物なんか全然まとめてない!あー!観光すら行ってないのにい!」

     一人大騒ぎして駆け出したランが食堂から出…ようとして止まり、後ろ向きに戻ってくると、レンを突っついた。

    「…どうしてレンはそんなに落ち着いてるの?」

    「だって私、自分の持ち物なんて無いし。あるとしても精々、ランが買ってきてくれた服くらいなのよ、私の荷物なんて、まとめるのに10分も掛からないわ」

     さもあらん。レンは文字通りすっぽんぽんの身一つで保護された為、私物というものを持っていないのだ。僅かにランの顔が引き攣る。

    「あ、あのさぁ、レン?」

    「荷物の整理は手伝わないよ?」

    「…なんで私の言いたい事が解ったの」

    「”私”の考える事だもの、お見通しよ。そうでなくとも予想は付いたけれど。…毎日ダラダラしていたランが悪いんだよ、手伝わないからね?」

    「うわぁあああん!だったら言ってくれても良かったじゃない、レンの鬼!鬼畜!スベスベマンジュウガニ!鼻の穴にグリンピース詰まっちゃえ!」

     涙目で走り去っていく背中を呆れながら眺めていた視線を戻す途中で、ちゃっかりランの皿にグリンピースの大半がお残しされている事に気付いたレンは、しまった、今のは逃げる口実だったのか、と衝撃を受けていた。同じであっても、やはり人としてはランの方が経験が上のようである。駄目な方だが。

     ランが意識していたかそうでなかったのか、ともあれ救いの手を自分で払い除けてしまったレンは、観念してグリンピースとの格闘に取り掛かる。

    「ていうか、スベスベマンジュウガニって、罵倒としてはどうなの?」

    「確か、毒を持った生物ですので、ある意味罵倒になるのではないかと…罵倒の仕方までお嬢様に似なくとも、とは思いますが」

     こうして、荷物の整理に追われる最中に、明日でお別れになるランを一目見ておきたいメイド達に度々押し掛けられ、結局帰り支度が整ったのは就寝間際になってからと、実家滞在の最終日を非常に勿体無く過ごす羽目になってしまうランであった。

     そして、いよいよ最終日の朝を迎える。

     さんさんと照らす日差しを帽子で遮って、ランはシュトラヘルツ邸を見上げた。

     思えば、最初に来た時は存在感に圧倒されて気後れしてしまったこの屋敷も、いつの間にか慣れてしまっていたのだと気付かされる。今では、去りゆくランに対して名残惜しそうにも見える佇まいに、後ろ髪を引かれる思いがランの胸を浸していた。

    (違う…名残惜しんでいるのは私の方だわ。お姉ちゃんが本当の私を知っても受け入れてくれたように、なんだかんだで私も、ここも自分の家として受け入れていたのね)

     長いようでいて短かったここでの生活を振り返ってみれば、本当に色々な経験をしたのだな、と思う。元傭兵に体を張ったゲームで勝利したり、セレブの世界にコードレスバンジーさせられたり、僅かなりにも実戦を経験したり。喜びもあった、悲しみもあった、憎しみを思い出し、優しさと愛情に包まれた。楽しかった事、辛かった事、良い事も悪い事も、全てをひっくるめて、今の自分がある。

     それから、自分の手に余る事まで覚えたり手に入れたりもした。自分が大財閥の令嬢になっていたという予想だにしなかった衝撃の事実、幽霊である事を最大限に活かすやり方を覚え、我が身を助けた射撃技術も成り行きで覚えた、更には人工の幽霊でありながら生命を持つ存在にまでなってしまった自分そのもの。どれも、これからも自分であり続けるのに必要は無いようにも思えるが、体が覚えてしまったものは感覚を損う事無く自然にできてしまうし、財布には考えただけで震えがくる莫大な財力の証が収まっていて、それを否応にも証明する様々な品物がキャリーバックに詰め込まれている。無かった事にしたくてもできず、どんなに目を背けようとも着いて回る現実ばかりは、どうしようもない。ただ、生命を持つ事に関しては、生きているというだけで案となく嬉しい気がするので、良しとする事にした。

     そして、二十年余りの歳月を経て辿り着いた真実と、ずっと自分を待ち焦がれていたレン。

    「…ん。なぁに?」

    「うん…ちょっとね、不思議だなぁって思って。だって、私は自分がエトランゼ・コピーだって事すら覚えていなかったんだよ、もしかしたらそのまま消滅したりとか、どこかで誰かに除霊されたりとかしてたかもしれないし、私を引き取ってくれたのがお姉ちゃんじゃなかったら、私は今もエトランゼのつもりで、事件とも、本当の自分とも、レンや他の私達とも全く無関係に過ごしていた可能性だってあった筈でしょう?それが色んな偶然を重ねて結局全部に関わってさ、私は私自身っていう確かなものを手に入れて、巡り巡ってこうしてレンとも一緒に居るじゃない。私だからこその可能性に全部乗っかった事になるのよ、これって、とても不思議な事だと思わない?」

     問い掛けられたレンは、じっとランを見詰めた後、小さく頷いた。

    「エトランゼの事を思えば、その不幸を土台にした私達が生まれてきた事を、必然だったなんて思いたくないわ。因果なんて言葉で片付けようとも思わない。でも、あれ以上エトランゼの死を弄ばれないようにできたんだし、彼女へのせめてもの手向けくらいにはなったでしょうし…苦い思い出ばかりだったけれど、”私達”もあなたも消える事無く、しかも生きている幽霊なんて滅茶苦茶な存在になった、この結末があなたの言う可能性の結果だというのなら、偶然が良い方へ良い方へと転がり続けた、出来過ぎな終わり方になるのよね。うん、そうね、とても不思議だわ」

     お互いに、こつんと額を合わせる。元が同じであったからなのか、こうする事で互いに気持ちを伝え合う事ができた。

     生きよう。ランとして、レンとして、エトランゼの代わりに。

     幸せになろう。不幸から生まれた業に負けないように。

     向かい合い、祈るようにしていたのは、ものの数秒だ。でも、心は一つだと解り合うには、それで十分だった。

     周囲でそれを見守っているメイド達の顔が緩みまくっているのが、雰囲気をブチ壊していたけれど。

    「ほらほら、シャンとする!そんなだらしない顔で小お嬢様方をお見送りする気?」

     そんなメイド達にコルが手を叩いて声を掛け、活を入れる。その後ろには、いつも通り能天気なピンクちゃんと、何やらそわそわしたキュイも着いてきていた。

    「いよいよお別れですね。あちらにお戻りになられても息災であられますよう、心よりお祈り致します、ランお嬢様、レンお嬢様」

    「お姉サマったら、今生の別れじゃないんだから…小お嬢様、いつでもお帰り下さいマセ、次はお友達もご一緒に!あたし達メイド一同、その時を首を長~くしてお待ちしていマスから!」

    「うん…コルさん、ピンクちゃん、本当にお世話になりました。ありがとう」

     礼を述べ、二人揃ってペコリと頭を下げると、二人のメイドは自分達が頭を下げられた事に一瞬面食らいはしたが、それを顔に出す事無く微笑んた。

    「私共はメイドでございます、礼には及びませんわ」

    「えへへ。あたし達としては、ずっとお世話して差し上げたいくらいなんデスけれどね~」

    「キュイさんも、今日までありがとう」

    「こちらこそ、ありがとうございました。小お嬢様のお陰で、気の弱かった私は…ほんのちょっぴりですけれど、変わる事ができました。感謝しても、し足りないくらいです!」

     そう答えるキュイが満面の笑みを浮かべた。それは喜びが溢れ出てきたのかと錯覚するくらい、輝きに満ちた笑顔。かつて前髪で隠されていた単眼は、今はもう萎縮する事無く、堂々とランを見つめていた。

    「えと、それで…感謝の印になるかどうか判らないのですが、これを受け取って頂けませんか!?」

     勢いよく差し出された手。そっと開かれた掌の上に、ビーズでできたキーホルダーがちょこんと乗っている。キュイがそわそわしていたのは、やっと完成したこれを早くランに見せたかったからのようだ。

     キーホルダーを手に取ったランは、感激の面持ちでそれを日に翳してみせた。キュイの初めての作品となる、少し不恰好だけれど愛嬌のある丸まったパンダは、半透明のビーズの中を通り抜ける日の光で、可愛らしい姿を煌めかせる。

    「わぁ、これ、完成したんだ!でもキュイさん、本当に貰っちゃって良いの?あんなに苦労して作ってたのに…」

    「元々、小お嬢様に差し上げるつもりで作っていたんです、パンダがお好きだとお聞きしたので。金具はミフィさんに付けてもらっちゃいましたけれど、何とか今日に間に合いました♪」

    「そうなんだ…うん、とっても嬉しい、大事にする!…あのね、実は私からもお礼を渡そうと思ってたの、キュイさんが一人前のメイドさんになれるようにっていう、私からのお守り。受け取って?」

     まさかランから同じようにお礼の品を贈られるとは思いも寄らず、きょとんとするキュイに差し出される、包装された小箱。無言で開けてみろと指し示され包装を剥がすと、妙に手触りの良い小洒落たケースが顔を覗かせた。

     蓋を開ければ中には二つのヘアピン。キュイの単眼に合わせたのか、ヘアピンにあしらわれた瞳の色を写し取ったような淡く透き通る緑石が、清涼感のある光沢を放っている。

    「付けてあげるから、しゃがんで。…キュイさん、最初はまだ目を隠していたでしょ?だから、折角綺麗な目をしているのに隠すのは勿体無いと思って、これを買っておいたの。でも、パーティーの準備で慌ただしかったし、事件も起きちゃったから、渡せなくなっちゃって。事件の後に渡せば良かったんだろうけれど、その時にはキュイさん、もう目を出すようにしてたから、言い出せなくて…ごめんね、今頃になって」

    「そんな事はありません!私もこれ、大事に使わせて頂きます!…それにしても小お嬢様、いつの間にこんな物を買っていたんですか?」

    「お買い物に行った時よ。ほら、射撃場にピンクちゃんが誘いに来た時の」

    「…えぅっ?」

     なにやら洒落にならなさそうな予感に、ランの手でヘアピンを付け替えられているキュイの背筋を、言い知れぬ感覚が駆け上がっていく。

    「キュイさんには絶対これだって思ったの。だって、こんなにキュイさんの瞳の色に近いんだよ、このエメラルド」

    「ほぁっ!!」

     予感は見事的中していた。これは、ランがパーティー用のジュエリーを買い込まされたあの日、お土産用に購入していた物の中のひとつで、有耶無耶の内にミフィが中身を聞きそびれた品である。つまりヘアピンという身近な物でありつつも、宝石商で購入した紛れも無い本物のとんでもねえガチ高級品なのであった。いくら金銭感覚に疎いキュイにだって、宝石の価値くらい解る。

     落とすのが怖くて関節に砂が入ったロボットじみた動きになったキュイを見て、初めは「自分達も救出を頑張ったんだから記念に何か欲しかったなー」とか考えていた護衛メイド二人組も、これには流石に冷や汗を滲ませつつ脳内アンパイヤが渾身の力を込めてセーフを宣言していたとかいないとか。

     そうこうしている間に、ワイワイと賑やかだったメイド達がざっと左右に捌け、綺麗な隊列で道を作る。一斉に頭を垂れるメイド達の中心を進むのは、ミフィを引き連れアイーナと肩を並べるエルザだった。

    「待たせたな。どうじゃ、お別れの挨拶は済んだか?」

    「うん。これ、キュイさんに貰っちゃった。手作りなんだよ」

    「…私は後からここに来たから、貰えなかった…ねえキュイさん、私のも作ってー」

    「ほう、これはまた可愛らしいキーホルダーじゃ、良かったなラン。レンは残念ながら少しばかりタイミングが悪かったなー。のうキュイ、儂からも頼む、レンにランと同じ物を作ってやってはくれまいか。レン、手作りとなると今すぐには無理じゃから、後で送ってもらおうな」

     予想外な話の流れに、固まっていたキュイが目を丸くする。

    「私もランみたいに直接貰いたい!それとコアラ!コアラが良い!」

    「ぬ、意外と我が強いな、しかもパンダではない?…だそうじゃ。渡すのは次にこの子達がここに来た時で良い、作ってくれたらイロ付けてやるから、どうじゃ、頼まれてはくれぬか?」

     初めての拙い作品をここまで求められるとは夢にも思っていなかったキュイは、舞い上がって二つ返事で承諾しそうになった所で、ある問題に気付き言葉に詰まった。自分の手では時間は掛かるとはいえランに贈ったパンダを完成させた期間を考えれば、ラン達が次の長期休暇を迎えるまでにもう一つ作るくらいなら十分可能だが、それ以前にキュイは研修に来ている見習いであって、正式にシュトラヘルツ家に雇われたメイドではないのだ。

    「ですが、私はあと一ヶ月で研修期間が終わりますし、次にお嬢様方がお帰りになられる時期には、私はもう…ですので、完成した物を送らせて頂くので宜しければ、お引き受け致します」

     いくら望まれようと、一人前のメイドとなったキュイの雇い先がこのシュトラヘルツ家になる、と決まっている訳ではない。こればかりは、キュイがどれだけ強く切望したところで、どうにもならない問題だった。

    「ああ、それな、心配はいらんぞ。半ば強引にではあったがキュイはランの救出時に素人同然の身で参加し、ミフィの指示の下ピンクの援護をこなしたと聞いておる、かつ黒幕にトドメを指す際にも一役買っておるからな、頑張った者に褒美を取らせるが世の道理よ。晴れて資格を取得した暁には、この二人の義妹のお付きのメイドとして雇ってやる、これが儂からの褒美じゃ!」

     ところがぎっちょん、時には平然と現実をひっくり返す人物が居たりして。

     驚きに、目の奥に籠る熱が瞳を潤ませ、視界がぼやけでいくのが自覚できる。同期の見習い達が口々に「良いなー」と羨ましがるのを背中で聞き、返事と共に勢いよく頭を下げようとして、ヘアピンの事を思い出して慎重に、ゆっくりと頭を下げた。

    「あ、ありがとうございます、お嬢様…!」

     本当は、不安だったのだ。家族や友人と離れ離れになって放り出されたこの異世界で、シュトラヘルツのメイド達から初まりランとの交流、そして事件を経て、少しは度胸と自信が付いたと自負しようとも、やはり見ず知らずの赤の他人の所へ独りで行く事に心細さを感じる程度には、未だ変わらない自分の気弱さを自覚していたから。エルザがそんなキュイの不安を汲んだのかどうかは定かではない、けれど、親しくしてくれる新たな友人も、可愛がってくれる頼もしい大人達も居る、短期間とはいえ居心地の良い居場所となったこの場所に居続けられる、それはキュイにとってどれだけ心強く、幸運な事か。

     それから今のヘアピンを気にした自分の動きが、一向に改善されなかったいつもの不慣れな作法とは違い、ぎこちないながらも先輩メイド達のような落ち着いた物腰で行えた事で、この贈り物は自分に作法を身に付けさせる為でもあるのだと解釈し、ランが自ら指導する為に見習いをお付きにしたというコルの言葉は本当だったのだと、ますます深まった誤解は確信にまで変わっていたりした。

    「やるじゃん」

    「任せろぃ」

     レンに肘で腰をつつかれ、エルザが得意気にニヤリと笑り、揃って粋なポーズを取る。初めて絡んでいる筈なのに早くも馴染んだ二人の息の合った連携に、レンに義姉を取られた気がして何故だかもやもやしてきたランは、下唇をキュッと小さく噛んだ。なんだかんだ言いつつも、取られてヤキモチを焼くくらいにはエルザを慕っているランなのだった。

     そんな”なんちゃって三姉妹”を微笑ましく眺めていたコルは、ふと懐中時計を開き、寂しげに息を吐く。

    「キュイの今後も決まって、おめでたいところを申し訳ございませんが…そろそろお時間でございます」

    「えっ、もうそんな時間!?」

     コルに言われ、まだ余裕があると思っていたランは、もう時間が来た事に驚いた自分に驚いていた。日本に帰れば親友達に会える、と帰国を心待ちにしていたというのに、いざこの地を離れるとなると寂しさを感じている自分が居る。

     でも、何時でもここに帰ってくる事ができる。

     だってここは、実感の無いままいつの間にか愛着が湧いていた、騒がしいけれど楽しくて頼もしい皆が待っていてくれる、もう一つの我が家なのだ。それにピンクちゃんも言っていた、今生の別れではない、と。

     会いたくなったら、また来ればいい。それだけの事だ。そう思えば寂しさが少しは薄れる。

    「じゃあ、行くね。皆さん、またよろしくお願いします!」

    「その時は私も一緒に、ね」

     ランとレンの最後の挨拶に、メイド達が沸き上がった。二人に戻ってくる気があるのだと喜ぶ者、暫しの別れを惜しむ者、皆口々に、思い思いの言葉で二人を見送ってくれている。

    「おーう、達者でなー。また会える日を楽しみにしとるぞ~」

     そしてメイド達に混じって手を振るエルザとミフィの腹にクリティカルする、ランの崩拳。

    「はあぁ!?はあぁぁぁぁぁぁ!?何やってんの何巫山戯てるの今この状況でその冗談ワロエナーイ!」

    「ちょ…おま…せ、説明…説明するから腹はやめてマジやめて…シャレになっとらんから…!」

    「つ、強くなったな小お嬢…ぐふっ」

    「全く…肝心な事ですのに、サプライズだー、なんて言って黙っているから、こうなりますのよ?」

    「サプライズ?ランだけじゃなくて、私にも?」

    「いや…実はな、ほれ、日本を立つ前に言っておったじゃろう、その…子を成したいと。それでじゃな、旦那も帰ってきた事じゃし、いよいよ子作りに励もうという話になってな?どうせだからハネムーンと洒落込んで世界を巡る事になったんじゃ。旦那と旅行なんて初めての事じゃし、この機会を逃すと次はいつになるか…だから是非とも行っておきたくて、な?」

    「で、見事お嬢が妊娠した暁には、今度は私達の番って事でな、私とアイーナも同行する事になったんだ」

     ぽく、ぽく、ぽく、ちーん。上目遣いに照れまくるエルザ、期待に胸膨らませるミフィ、呆れながらも嬉しそうなアイーナ、そんな捻くれリア充三人組を前にきっちり10秒間制止していた二人が、同時に叫んだ。

    「「それはサプライズとはいわねえぇぇ―――ッ!!!!」」

     いわねえぇー、ねえぇー、ぇー…。奇しくも同じ存在である事を感じさせる心からの叫びが、広大な敷地に空しく木霊する。

    「なんでそんな大事な事を今言うかな!?ていうか、いくら二人になったからって突然家の事全部任されても急過ぎて困るよう!」

    「お嬢様暮らしするより気は楽だけれどね、黙っていても勝手に食事が出てくる自堕落ライフが送れなくなるだけで…」

     至極当然の事を喚くランと、真顔で落ち込む本音駄々漏れのレン。

    「まあ落ち着け、雪恋に話は付けてあるから、おぬしらの世話も含めてあっちの家の事は金香と銀香が面倒見てくれる事になっておる。寂しければ菓厘堂に身を寄せるなり、玉竜でも呼んで住まわせるなりしても良い、それと儂の部屋にある物は何でも使ってくれて構わん。どうしても無理というなら、誰ぞメイドを派遣しよう。あれじゃあれ、アニメやゲームでよくある、主人公の家族が海外に行っていて気ままな独り暮らし―、みたいな、な?」

    「説得に必死みたいだけど、当事者の知らない所で勝手に話進めて勝手に決めた事に怒ってるの!」

    「こ、小お嬢様、ご立腹のところ申し訳ございませんが、出立のお時間が差し迫っております!」

     コルに急かされ、ランは体を震わせた。誰の目も無ければ地団駄でも踏みたい気分だった。

    「もおぉ!結局最後までドタバタして終わっちゃったじゃない!覚えてなさいよ、次に会ったら…赤ちゃん、抱っこさせてね…」

    「…!おう、勿論じゃとも!玉のように可愛らしい子を産んでみせるし、産ませてやるから、楽しみに待っておるが良い!」

     言葉通り急な話に怒っていただけで、反対する気など元々無かったのか…怒りから一転して優しい声になったランに、エルザは飛び切りの笑顔で応えた。その笑顔へ向けてエールを送るように頷いた二人が、飛行場に向かう車に乗り込む前に、もう一度振り返る。

    「それじゃ改めて…またね!」

    「バイバ~イ、また今度!」

    そして、その表情に見惚れて停止する者達を残して、二人は去っていったのだった。

    Karindou 4 Koma Extra Story Pseudo Short Story [Ghostrick Live] 16

    The sun had already been up for some time. In the room hidden away from the roasting sunlight that was usual during this season, there was the sound of a hesitant knock.
    Then, the door was opened slightly, and a large eye peered in through the crack, checking to see whether there was anyone surprised inside. With a towering, huddled body, Cuey soundlessly slid into the room.
    Every morning, the "little mistress", Ran,had a sleeping posture that was at a vertical diagonal to how it should be, greeting Cuey with immodest body displayed. But today, it was better (?), being sideways on the bed, and she gave a sigh of relief.
    "Good morning, mistresses. It's time to wake up~...? Huh?"
    Cuey stopped moved as she gave her shoulder a gentle shake. Among the Schtlehertz maids, there were only 1 or 2 that could match the height of Cuey. And even Cuey, by bending her legs a little, could fit on the bed. But, even though several days ago "Ran became two people", there was only one sleeping there.
    Maybe one of them had turned ghostly while sleeping, and had sunk beneath the bed?, she thought, since yesterday, one was above the lights and the one was skillfully stuck between the bed and the floor, and that had been a real problem. This time, there was only one, but one could have slipped to somewhere she couldn't see and be sleeping... In the dresser or in the closet, or at worst, she'd have to look in the rooms next door and also above and below.
    That would take twice the time... As Cuey started thinking that and chastised herself, the sleeping Ran started to wake up. Or so she thought, but the Ran who was wearing the panda pajamas stayed asleep, and a naked Ran got up.
    Not immediately realizing what was happening, Cuey blinked in surprise. Ran turned towards her, and then both Rans said.
    ""Out of body experience~""
    "Bwaah! Hahahaha"
    Cuey broke down into laughter like she probably had never done before.
    Several years before, in Japan, while not super popular, there was a thing known as "twin skills", but Cuey didn't know of that, so it was so effective that it made her sides split.
    Cuey was curled up in a ball on the soft rug, twitching, as the two Rans happily matched hands and congratulated each other.

    This might not need to be mentioned, but the one in the panda pajamas was the Ran we're familiar with, and the naked one was the duplicate of Ran, given the name "Ren" by Elza. The reasoning behind that was "The same existence as Ran, who was refined = Re-Ran (This was taken from 'Re-GZ', but she would get in trouble if she said that, so she kept it a secret) = Ren (replacing the A in Ran with a E)". It was pretty simplistic, but Ren seemed to like it. It meant that she had her own name, and the fact that it was similar to Ran so it wouldn't feel strange sealed the deal.
    She wasn't just someone with a similar existence as Ran, but she had an exact copy of Ran's memories, so she were able to follow Ran even on gags that she shouldn't know. So whether it was walking or pranking, the result was any opening could be turned into a funny joke.
    ...For the first time, Ren met someone else who was self aware, and she took the opportunity to do pranks. Ran, who understood this better than anyone, stayed with her all the time but... In any case, the maids were overwhelmed by them.
    "The little mistress has super evolved from a ghost into a little devil."
    Among the maids, they felt that "fake twins" was the best way to put it.
    They were also called pranking specialist Kyodyne, but the other maids who didn't know about Japanese tokusatsu shows didn't get it, so didn't catch on.

    It could be thought of that they were, not including the copies originally created by the ghost-girl-turned-vengeful-ghost Etranger, simply Ran split into two (Things like planarians or slimes can do a trick like this if split, so it's not a problem).
    However, that really isn't enough, because they underwent a huge transformation.

    The day after that incident.
    Since there were a lot of loose ends to deal with, once again, VK visted the Schtlehertz mansion, and had this conversation with Elza.
    "Actually... in order to stop copies of this incident, and to eliminate the various causes which allowed this to take place, it is our opinion that it would be bad for the "ghost copy research" that created your sister to be made public. Therefore, in order to prevent the information from being leaked, the girls had a health evaluation done not by the Sweepers, but by this medical team, as we agreed. The results, umm, how should say this... Well, taking into consideration their situation, I wonder if this decision was correct..."
    "You're avoiding the question. If they're not virgins, I don't care. Anyway, the original was raped and died, so as copies, even if they weren't born virgins, it wouldn't be that odd..."
    "That's not it!"
    Trying to fight the right words but not finding any, VK raised his voice. Elza raised her eyebrows.
    "In truth, I had no idea how to explain this. So I'll just tell you the conclusion. We found vital signs in your two sisters."
    "......Huh?"
    With a big sigh, Elza's jaw dropped.
    "So, we found vital signs in them! It's unbelievable, as absurd as an existence and personality like you! They are undeniably "alive"!"
    "Ehh... So they're a living spirit? But... The original was already dead...? Is it because the body was lost...? This is fundamentally different from possession, and even if they had a body, there would be a soul thread connecting the original's body with the copy...? Huh? Huh??"
    "No! It's not like how the soul leaves the body like in a near death experience! They're ghosts, but not ghosts like a soul given form. A single existence with a living soul, they're exactly as the term sounds, a literal "living ghost"! I! Don't! Understand!"
    "Ah... Ah. Somehow, I understand. Basically, if they have children, it will be Kitarou. A real ghost family, wow."
    "So how are you so calm---!!! They're living or alive and dead!
    The theory explaining what souls are!! This fundamentally flies in the face of that!!!"
    With his gentlemanly demeanor missing, VK was left yelling ugah and gwah and gripping his head. In contrast, Elza had a charming smile and brought an end to this problem with just one phrase.
    "Let's decide this. No matter what kind of existence they are, it won't change the fact that the two of them are my precious family."

    VK looked like he got cut down by a single stroke. As the current manager of the hotel and Sweepers branch, he burned out to pure white. Turned into a living corpse who could only say "ah" or "pah", he would be useless for a little while.
    Of course, Elza accepted Ran and Ren, ignoring their abnormal situation, and she was also exhausted from dealing with the chaotic reaction, but afterwards, Elza put aside her feelings and smacked him around.

    The two of them put Cuey, whose sides had cramped from laughing too much, on their bed to rest, and then headed towards the distant dining room for breakfast, when they noticed a smell in front of a room.
    It was the lingering smell of sweat and semen mixed together. Also, this room was Elza's personal room... That was the main reason for the smell.
    Ran had a clearly disgusted look on her face as she held her nose. When Ren, interested, tried looked inside, she grabbed her back the back of the neck. While the same, the two of them were surprisingly different.
    "They're still doing it? This is already the 3rd day... They don't get tired of it."
    "Actually, you should say, they keep on going. But, it's been a long time since they last met, and as a couple in love, isn't that natural?"
    "But that couple's relationship isn't an honest joining!? ...Ah, I know this in my head, but... If I can't get used to it, I can't get used to it."
    "But Ran, when Tamaryuu seeks you out, you'll respond to her, right? Or will you reject her? Even though you love her?"
    As an answer to Ren's question, Ran blushed and looked away, but Ran's bad mood didn't go away completely.
    "It's a younger sister's duty to support. This is for Onee-chan's happiness?"
    "...But, even though we should call him our brother-in-law, since he's Onee-chan's husband, it's... no matter how you look at it, he's an old man."
    Yes, just as Ran said, Elza's husband had returned to the Schtlehertz mansion after being away for decades.

    It happened as VK, having finished reporting about the abnormal condition about Ran and Ren, was about to return to the hotel. In the hall, the "Congratulations☆Saving The Little Mistress Party" was starting, and the celebrating maids were being extremely quiet. He could even sense a killing intent, perhaps some survivors of the organization had appeared for revenge, and he hurried towards it. Then he saw an old man, surrounded by the guard maids.
    With an appearance looking like something out of a fantasy world, the old man in front of VK didn't seem to let off a hostile or evil intent. Several older maids had been given guns by Col, and Pink-chan looked like she was about to throw some knives any moment. Quickly stopping her, he turned towards the old man and respectfully bowed his head.
    "I greatly apologize for this, after being gone for so long! Welcome back, sir!!"
    For a moment, it felt like a soundless shockwave hit the Schtlehertz mansion.
    "...Husband!? Y, you're back!"
    Though a wizard should have noticed this without a big deal, Elza rushed in, as her words hit VK like a shockwave. Elza rushed past VK, and with an expression he had never seen before, jumped into the old man with a look of rapture.
    "Welcome home husband~♪ Husband~♪"
    "I'm home, Elza. Ah, umm... So, I am Elza's husband. Perhaps you'll believe me?"
    The flustered maids, and in the middle of them, Elza, fawned over him like a kitten. VK was certain he heard, in his mind, the sound of something creaking.
    Right after that, he was cruelly cornered. Elza's husband was hunted down by Mifi and Aiina.
    At first, they had planned on waiting for Elza herself to say it, but even though it would ruin the mood, Elza was nervous and wouldn't really say it, so they got fed up, and nipped it in the bud and forced her to say it.
    'I want a child.'
    And then Mifi and Aiina also declared that they wanted to have a child with Elza.
    The maids tensed themselves for a bloodbath, but instead, the husband's response was unexpected.
    "Then, first, Elza and I must have our child first. As her official husband, I will not yield that right. ...However, hmm, at last, a child. I was surprised with Seren back then, but finally, Elza and my child, huh. Ah, so you've decided!"
    ...And so, he was very happy. Though, he would have been fine even if his wife didn't want to give birth to their child, but he somehow seemed even happier compared to Mifi and Aiina, so it was very incomprehensible.
    It seems that, since he loved Elza so much, it didn't matter. The two normal humans had been prepared for an all out war against a wizard, but instead any ill feelings had been blown away and he dealt with it by asking "is that okay with you?" And then, the husband even said "Elza loves you, but I want her to know the joy of being loved even more, since, in any case, Elza loves you from her male side. If Elza loves a woman, I've decided that I'll allow it. However, I also decided... I will be the only man who loves Elza."
    Basically, Elza had a completely messed up philosophy of love, and since he's her husband, he also had some messed up thoughts as well. Anyway, from what they heard from Elza, he was the original cause of Elza's messed up philosophy of love. The husband wasn't a very direct person, so when they arranged their thoughts, it was pretty easy to imagine this.
    Mifi and Aiina exchanged confused glances, and then sentenced the hopeless stupid couple to a piko hammer whirlwind. Maybe the were looking forwarder to seeing their children's faces, but the young ones' fearless faces broke out into a grin. Annoyed by the husband, they hit him with a piko piko, and their punishment lasted for 30 minutes.
    "...Mister? Hey, what's wrong, Mister!?"
    After the excitement from that "twisted real fags' lover's quarrel", with his heart just having been snapped, VK had fallen down with his tears soaking the carpet. It was the first time they had seen him like that, and the maids, deciding it was over, started leaving in small groups.

    ...After that, Elza and her husband locked themselves in a room, and, ignoring food and sleep, continued their excitement, and so now they were still doing it. Wondering what kind of sight awaited inside the room, Pink-chan went into excited mode as she drew near, so you can probably guess what she expected.
    Separated by the door, Ran could hear the muffled high pitched screams of Elza's charming voice. A complicated feeling spread over Ran, and she dragged Ren, who was heading towards the dining room, over.
    "You were thinking what would happen if you and Tamaryuu did that, weren't you? I was thinking that too."
    As Ren put both of her hands on her cheeks and went oh no, Ran reflexively thought that if Shizuki wasn't included, what would happen is she'd be her huge enemy. She changed her grip from her the back of her neck to her ears and pulled her as the start of a distraction.
    "Ah, wait, don't pull my ears, my ears hurt, my ears huuuuuuuuuuuuuuuurt"
    Although they looked the same, she hated how Ren had a personality similar to her older sister.
    But the fact there was a slight difference in personality means that she wasn't just an Etranger copy, but was now an individual known as Ren. She was happy about this.

    Meanwhile.
    "...I don't understand."
    Standing in a front of a mirror with multiple people messing with her clothes and hair, Lolint muttered with a frown.
    As proof that the anti-tank soldier Giganov had been taken out, Col had confiscated the Gigant. If her other body wasn't close to her real self, her movements would be restricted, so to alleviate this weakness, it would be returned, but for some reason, Pink-chan had a significant smile on her face as she gave her a small heart-shaped pouch that she had bought for her. However, she couldn't shoot. Even if she was allowed to carry, she had to get approval from Col to fire. That was the restriction place on her, and even if she was going to fire, her current young body wouldn't be able to handle it. Lolint didn't have any strength, she was a perfect little girl.

    (27% Done. Slowly progressing.)

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