Artist's commentary
【PFLS】緋都狙撃
今回の戦における、ケイヴァンの役割は二つあった。
一つは最大の体躯に戻った状態で
列強の戦士たちをひきつけ消耗させること。
もう一つが、次隊の巨影たちと交替のタイミングで
レッドヴァル中枢の結界を魔力の矢によって破ること。
ケイヴァンが人間の姿でいる間、巨蟹時の質量を
相殺するために使う膨大な量の魔力を
そのまま武器として打ち込む。
レッドヴァルに放った密偵とユキの計算では
相応のダメージが与えられると見込まれていた。
ノーザリアの民が最後の戦いに向けて
各々の役割と意志の元に死力を尽くす。
祈りよりも強い心の叫びとともに弓は引き絞られた。
陛下が「家族」とお呼びくださった、青国の全ての民、
皆の悲願に、どうか善き報いのあらんことを。
届け、矢よ。春のその先へ届け!
ベルクさん【pixiv #72980621 »】
ハバカリさん【pixiv #72940034 »】
デアちゃま【pixiv #73124885 »】人モード
ライラさん【pixiv #73353336 »】
ニアさん【pixiv #73651902 »】
ジャルヴァルさん【pixiv #73565093 »】
シグトルさん【pixiv #72959074 »】
ヴェルメリアさん【pixiv #72938270 »】
萊昂さん【pixiv #73203910 »】
マールマールさん【pixiv #73619333 »】
ケイヴァン【pixiv #73126162 »】
コドコド【pixiv #73551144 »】
お構いくださり、ありがとうございました!
久しぶりにとても楽しかったです。
最終的な役職は「ノーザリアの物語を描く城壁」でした。嬉しい。
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【蛇足】
9年前
レッドヴァルの食堂で
行きずりの男たちと
世間話に興じていた
花見の話題で盛り上がる彼らに
さも楽しそうに便乗しつつ
気持ちはどこか遠かった
「そうか
南の人たちは
春の訪れが楽しいんだな」
ケイヴァン自身は
皇帝直属の騎士デイゲンに
拾われて以来
何不自由なく暮らしてきた
だがそれを
当たり前と思い続けられるほど
甘い環境ではなかった
春の訪れは
冬以上に苦々しい季節だ
ようやく雪が減る頃に
国内各地の最初の巡回が始まる
ケイヴァンは見習い時代から
これが嫌だった
特に寒村部では
貯蔵していた食料が底をつく頃で
新しい食べ物が作られるには
待たねばならない恐怖の期間
虫たちはまだ卵の中で
虫が孵らなければ
虫を食べる鳥や魚も
戻ってはこない
畑にまいた種は
小さな芽を吹いたばかりで
腹の足しになるものではない
あと少しで暖かくなる
あと少しで芽が出る
あと少しで虫たちが生まれる
あと少しで鳥や魚が帰ってくる
あと少しで
ああ
あと少しで
そんな希望を
出戻りの寒波が踏み荒らし
冬の間に体力を失ったものから死んでいく
朽ちていく骸を後目に
しらじらしく咲く
色とりどりの偽善
ケイヴァンにとって
春とは地獄の門
生きることを楽しみ、陽気で
あらゆることをとことん
面白おかしく追求せんとする
ケイヴァンだったが
唯一、花を
特に春の花を
美しいと思ったことだけは
なかった