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Artist's commentary
アリスと有栖
有栖川ふみ(10)が、アリス・オールウィン(10)と出会ったのは、
父に連れられて訪ねた、英国人貿易商バートラム・オールウィン氏の横浜の私邸でした。
互いの父が商談をしている間、2人は日当たりの良いちいさなホールで――時にはそっと屋敷を抜け出し、近所の森で――いっしょに遊びました。
「わたし、あなたのこと有栖って呼ぶわ。あなたもわたしのことはアリスって呼んでちょうだいね。まぎらわしくって面白いでしょう!」
はじめはアリスのお転婆っぷりに戸惑うばかりの有栖でしたが、徐々に心をひらいてゆきます。
それは1930年の春のこと。
不穏な時代はすぐそこまで迫っていましたが、少女たちの世界には まだ、華やかできらきらしたものが満ちておりました。