Resized to 70% of original (view original)
Artist's commentary
ピアシスと水瑠璃の指輪
二の月と三の週、純直なる天魔ピアシスがグレゴリウスの孫娘たるルーティヤに呼ばれた事には―― 「よう来たな。お前で最後じゃ」
「他の皆から話は聞いてます……私には一体なにを?」
「お前に適任なものじゃ。かつて地上に繁栄したアトラティカ、その民だけが作りえた水瑠璃の指輪とやらを見てみたくてな」
「えっ! そんな難題な!?」
「だから探して欲しいと言ってるのじゃ。なんでもその指輪には意中の者を振り向かせる力があると聞くとか――」
「行って来ます!」
アトラティカはいまや海の底に沈み、その宮殿には竜神が住むという。ピアシスは夜天を分厚い雲で覆ってもらうようグレゴリウスに頼み込んだ。すると漆黒の海の底から微かな灯りが見える。そこに向かってピアシスは雲の上から勢いよく飛び込むと、その衝撃に雲はもちろん海の水も割れ、宮殿に住む竜神は数千年ぶりに夜天の光を浴びた。喜んだ竜神は、一人残ったアトラの娘をピアシスに嫁がせようとするが、
「私は女魔ゆえ、女性と結婚することは出来ません。てゆうかアリイェイスと結婚したい」
と言うないなや差し出された水瑠璃の婚約指輪をさっと取り帰って行った。
その指輪には巨大な魔力が込められているが、縁結びの力などはなく、一月眺めて満足したルーティアが夜天から落とすと、竜神の角にすっぽりとはまったという。
めでたしめでたし。